仲田乗合自動車

提供: 下北沢百科

仲田乗合自動車は、大正十二年に開通したバス路線である。会社種別は不明。

経緯

  • 大正十二年(1923年)1月:仲田乗合自動車が開通。当初のルートは渋谷三軒茶屋~上町~自動車学校~喜多見間。
  • 大正十四年(1925年)1月:多摩川電気鉄道下高井戸線の開通により、上町以東を廃止。世田谷上町~自動車学校~喜多見間の路線となる。[1]
  • 昭和四年(1929年)10月:玉川乗合に買収される。以下の経緯は玉川乗合の項を参照のこと。

このバス会社は下北沢地域とは直接の接点がないが、仲田乗合を買収した玉川乗合は淡島前を通っていた日東乗合自動車も買収している。

東京近郊電車案内 : 附・乗合自動車

大正十五年『東京近郊電車案内 : 附・乗合自動車』[2]では、経営者の名前が北林安太郎氏となっているが、路線的に同一と考えられるので、ここに引用する。[1]

中渋谷きぬた間 北林氏経営乗合自動車

停留所名 道玄坂上より(銭) 同時分(分)
道玄坂上
大橋 5 3
三軒茶屋 15 7
若林 20 10
世田ヶ谷電停前 25 15
同 上町電停前 30 18
陸軍自動車学校前 45 23
三本杉 55 28
大蔵 65 33
砧村喜多見 75 40

乗合の外にハイヤー部がありまして、乗心地の好い高級貸切自動車が皆様の御用を御待ちして居ります。御用命次第どこへでも直に御伴致しますから是非一度御使用を願ひます。

  • 中渋谷道玄坂上
    北林自動車部
    電話青山一三三八番
  • 世田ヶ谷下町
    北林自動車本店
    電話世田ヶ谷十四番

営業案内

  1. 午前七時四十分より午後七時半迄三十分毎に発車
  2. 前記停留所の外、危険なき限り沿道便宜の場所に停車の上乗降者の便を図る。
  3. 沿道の主なる名所学校等は左の如くである。松陰神社、春秋園遊園地、豪徳寺、勝光院、大場住宅地(通称宮内省住宅地)、陸軍自動車学校、大蔵原美晴台、大蔵談林、成城学院等への近道
  4. 団体乗車は特に賃金の割引を為す、但し予め申込のこと。
  5. 学生通学券は賃金五割引
  6. 調布街道の改修を待って、砧村喜多見より狛江村の岩戸、和泉(小田原急行の停車場敷地付近)、藤塚を経て国領(京王電車の停留所附近)まで延長の予定、尚和泉より多摩川登戸までの支線も同時に開業の計画である。
  7. 経営者 北林安太郎氏

  1. 1.0 1.1 『世田谷近・現代史』では「経緯」の節のように書かれているが、『東京近郊電車案内』とは二点相違点がある。
    1)会社名が「仲田」か「北林」か。どちらも正しく、途中で名称変更した可能性もある。ただ、玉川乗合に関する資料では仲田の方が使われているので、創業時は北林、大正十四年以降昭和四年までのどこかで仲田に変わった、という仮説を立てておきたい。
    2)大正十四年に「上町以東廃止」か、それ以降も継続したか。『東京近郊電車案内』では電停前バス停の名称が明記されており、玉電下高井戸線開通後に作られたバス停であることは明白である。したがって、下高井戸線開通後もしばらくの期間は渋谷~上町間も引き続き運営されていたのではないか。『世田谷近現代史』の記述は、「玉電下高井戸線が大正十四年に開通した」ために、その後昭和四年までの間に上町以東が廃止された、と読むのが正しいように思われる。
  2. 渡辺政太郎編『東京近郊電車案内 : 附・乗合自動車』(鉄道智識普及学会、大正十五年)pp.217-218